シティ・モビリティ

トラック不足解消へ荷主に対する荷待ち・荷役等対策規制が強化
~改正物流二法2025年4月1日に一部施行(1)~

上級研究員 水上 義宣

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トラック運転手の長時間労働是正を目的に、2024年4月1日から運転手の拘束時間を原則1日13時間以内とする労働時間規制の強化がなされた。規制強化によりトラック輸送力が最大14%不足するとの試算1もあり、運転手が運転以外の荷待ち、荷役、附帯作業等に従事する時間を削減することが急務となった。

しかし、国土交通省が行った調査によると、2020年度と比較して2024年度の運転手の拘束時間は短くなったが、荷待ち、荷役、附帯作業の時間は減っておらず、結果的に運転時間が減少し、輸送力不足につながっている。

≪図表1≫トラック運転手の1運行あたりの拘束時間とその内訳の変化

また、国土交通省のトラックGメンが2024年9~10月に行った調査では、荷主による違反原因行為のうち34%が長時間の荷待ち、24%が契約にない附帯業務で、不適正な荷待ち、荷役、附帯作業が多いことが分かる。

荷主による違反原因行為

こうした、荷待ち、荷役時間や附帯作業を削減するには、運送事業者だけでなく、荷物を発送する発荷主、荷物を受取る着荷主の協力が必要となる4。2025年4月1日から施行される改正物流効率化法及び改正貨物自動車運送事業法(以下「改正物流二法」)では、荷主への規制が段階的に強化される。

≪図表3≫改正物流二法により2025年度以降荷主に課される義務

まず、貨物自動車運送事業法により、運送契約の書面化が義務付けられる。これにより、貨物自動車運送事業者と運送契約を結ぶ場合、荷役作業や附帯作業、有料道路料金等の特別な作業や料金が発生する場合、書面にその内容や対価、料金を明示することが義務付けられる。従って、2025年度以降、トラック運転手に荷物の積み降ろしや検品等をさせる場合は契約に明記していなければ違反となる。

次に物流効率化法により、すべての荷主に積載率の向上、荷待ち時間の削減、荷役の省力化等に努めるよう義務付けられる。これらの措置はあくまで努力義務ではあるが、年9万トン以上の貨物を扱う荷主6は2026年度から特定荷主に指定7され、こうした措置について、物流統括管理者を選任し、改善のための中長期計画を策定し、実施状況について定期報告書を作成するよう求められる。また、定期報告書は国に提出された後、評価され、取組状況がランク評価等によって公表されることが予定8されている。従って、2025年度は努力義務ではあるものの、実質的に2026年度からの義務化を見据え、早急に物流の効率化、特に荷待ち・荷役時間の削減等に着手することが求められる。

以上のとおり、2025年4月1日に施行される改正物流二法では、荷主に対する規制が強化される。従来のように、長時間の荷待ちを放置したり、荷役や附帯作業の内容を契約に記載しなかったり、その対価を不明確にすることは今後違反となる可能性が高い。また、運送契約の書面化については違反した場合、運送事業者には行政処分が課される予定9となっている。従って、附帯作業等を明記した運送の書面発注を行わない場合、運送事業者から契約を拒否されるだろう。

トラック運転手の長時間労働と低賃金を是正し、輸送力不足を緩和するためには、トラック運転手の荷待ち・荷役時間や附帯作業を削減することが重要となる。改正物流二法の施行を契機として、荷主にも契約の適正化と物流の効率化を一層進めることが求められる。

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