【動画あり】ロボットタクシーWaymo(ウェイモ)
現地レポート/営業開始3都市目:ロサンゼルスでの運行実態は?
※海外のロボットタクシーの開発動向について、随時情報発信しています。
Waymoに関しては、アプリの使い方・走行の特徴、2024年12月に公表された日本進出についてもまとめています。
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自動運転レベル4のロボットタクシー(自動運転タクシー)を既に商用化しているWaymo(ウェイモ)の最新動向をレポートします。
今回は、フェニックス、サンフランシスコに次ぐ、 営業運行3都市目: ロサンゼルスを訪問しました。 ロサンゼルスでは合計75km(47マイル)乗車し、 これで筆者は3都市累計で270km(170マイル)乗車したことになりました。
このページの最後には、筆者がロサンゼルスで75km乗った中から、注目すべきシーンを集めた動画を掲載しています。高い技術力に裏打ちされたWaymoが、複雑な市街地の環境下でどのような挙動を見せるのか、現地での走行の模様をぜひご覧ください!
なお、乗車後のアンケートにも毎度きちんと回答していたところ、この度、Waymoから「Trusted Tester(信頼できるテスト利用者)」の認定を受けることができました。Waymoは、新たに事業展開を行う都市では、営業開始前に、限られたユーザーにインビテーションコードを配付して有償サービスのテストを行っています。ロサンゼルスでのテストには間に合いませんでしたが、今後、Waymoが参入を予定している都市では、筆者もテスト利用が可能になるようです。
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<3都市目:ロサンゼルス~営業開始から3ヵ月で運行エリア拡張、高速道路への挑戦も~>
2024年11月12日(現地時間)、Waymoはロサンゼルスエリアでのロボットタクシーサービスを一般開放しました。約80平方マイル(約207km2、東京23区の1/3ほどに相当)のエリアで、24時間365日利用可能です*1。
2025年2月11日(現地時間)には、さらに南側へ10平方マイルの運行エリアが追加され*2、ロサンゼルス国際空港のすぐ手前まで到達しました。空港から宿泊先のホテルやダウンタウンまでといった移動は、タクシーの利用ニーズが高いユースケースです。フェニックスでは、UberやLyftの車両に混じって、Waymoのロボットタクシーがフェニックス国際空港のライドシェアゾーンへの乗り入れを開始しています。米国の玄関口であるロサンゼルス国際空港にWaymoが乗り入れる日が来るのかどうか、今後の進展に注目したいところです。


※空港の位置は筆者補記
■なぜ、ロサンゼルス?
先に営業運行がはじまったフェニックスとサンフランシスコは、自動運転の公道走行試験が早くから解放されていたエリアで、Waymoほか複数のプレイヤーも実証実験を行っています。一方、西海岸の中心都市ロサンゼルスで自動運転車を走らせているのはWaymoのみです。
米国では、自動運転車の公道走行や旅客輸送の許認可に関わる規制は州ごとに異なりますが、ロサンゼルスは、サンフランシスコと同じカリフォルニア州に所在しています。Waymoは、サンフランシスコで営業を開始するにあたり、車内無人の公道走行許可はDMV(カリフォルニア州陸運局)から、有償での旅客輸送の許可はCPUC(カリフォルニア州公益事業委員会)から得た経験があります。大都市圏でのタクシーサービスを追求するWaymoにとって、ロサンゼルスは新たな州に進出するより規制上のハードルが低く、営業開始までの期間短縮が望める地だったと考えられます。
一般道での営業を開始した裏で、ロサンゼルスでは新たな試みも始まっています。移動時間短縮のため、高速道路を含んだルートによる走行試験が開始されました*3。まだ乗客を乗せた運行は行われていませんが、Waymoのユーザビリティ向上のための取組みの1つと言えます。
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<攻めるWaymo ~技術実証のフェーズから、事業拡大手法の検証フェーズへ~>
”ロサンゼルスの次”に向けた動きにも注目です。2025年、Waymoは米国での運行エリアを一気に拡大する構想です。4都市目はテキサスの州都オースティンになる可能性が高く、その次の候補地にはマイアミ、アトランタ、ラスベガスなど各州の中心都市が名を連ねています。Waymoのタクシーサービスは技術実証のフェーズから、早くも事業拡大の手法を検証するフェーズに移行しています。 安全性を確実に担保しながら事業拡大するため、具体的には以下のような検証項目が挙げられています:
- 新たな都市に事業参入する際の手順やリードタイムの検証
- 寒暖差の激しい砂漠地域や積雪地帯など、厳しい気候条件での車両の性能評価の実施
※Waymoの車両ラインナップはすべてBEVのため、寒暖差は空調の消費電力はバッテリー残量への影響が懸念されます。 - 豪雨地帯での走行可能な条件の研究
※大雨は自動車の利用ニーズが高まる場面ですが、自動運転車にとっては見通しの悪い気象条件です。
なお、霧については「霧の街 サンフランシスコ」で相応の検証を重ねています。 - UberのアプリからWaymoのタクシーの手配を可能にし、ユーザビリティの向上と顧客接点を拡大
※オースティンとアトランタが対象 ・・・など
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<ロサンゼルスでの乗車体験記 ~台数少なく待ち時間は長めだが、走行は非常に安定~>
さて、ここからはロサンゼルスのWaymoの乗車体験記です!
■運行台数は少なめ、待ち時間が長いことも
フェニックス、サンフランシスコと比較してすぐに気づいたことがあります。日中に街を歩いていてもWaymoの車両にまったく出会わないのです。先の2都市では、ダウンタウンを歩いていれば3~5台すれ違いますし、交差点で信号待ちをしているWaymoもちらほら見かけます。
「ロサンゼルスは、まだ運行台数が少なそうだな…」という予感は的中。配車依頼をしても、なかなか車両が来ません。現地報道によれば、まだ100台ほどしか運行していないとのことで*4、筆者は「23分待ち」と表示されたのが最長の配車時間となりました。 晴れた日の夕方でした。
ロサンゼルスには日本企業の拠点が多く、出張の機会などにWaymoに試乗してみたいと考えている方もいらっしゃるかもしれません。ご承知とは思いますが、ロサンゼルスの特にダウンタウンエリアは治安がよくありません。車移動が基本のため、中心地でも人通りが少ないエリアが多々あります。そのため、15分を超える配車時間が表示された場合は、Waymo以外の移動手段の選択をおすすめします。
また、どの都市でも同じ状況ですが、現在のWaymoは、 必ずしも自分の目の前に停まってくれるタクシーサービスではありません。Waymoのシステムから提示される最寄りの乗車地点(pick up)・降車地点(drop off)で乗り降りする必要があります。Waymoに乗るために現在地から5分程度歩かなければならない、といったことが多々発生しますので、天候やご自身の荷物の量などを踏まえて、Waymoを利用するかどうかを判断してください。
※Waymoの利用方法・注意点は、別のレポートで詳しく解説しています
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夜になると、路上で何台かWaymoの車両を見かけるようになり、10分未満で配車可能なケースが多くなりました。現地に住む人、特に女性からは、夜間に1人でUberやLyftを使うのは怖いという声があります。人間のドライバーと密室に2人きりになってしまうためです。夜間になると車内無人のWaymoの利用ニーズが高まるようです。
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■Uberとの運賃比較 ~ただし、車種のラインナップにも差分あり~
WaymoとUberで比較してみました。ダイナミックプライシングのため一概には比較できませんが、昼間は稼働しているドライバーの多いUberのほうが安くなるようでした。
ただし、WaymoとUberでは選択可能な車種が異なります。ロサンゼルスのWaymoの車両は、ジャガーのBEV「I-PACE」のみです。運転席は乗車不可のため、助手席と後部座席で最大4人乗りです。一方のUberは、Uber X、Uberコンフォートなど、利用人数や荷物の量に合わせて様々な車種が選択できます。運賃だけでなく、ご自身の状況に合わせた利用をおすすめします。
「ドライバーの人件費が不要になるのだから、ロボットタクシーの運賃は安価になるのでは?」という期待される方もいらっしゃるかもしれません。将来的にはその可能性もありますが、現状は、タクシーやライドシェア(Uber・Lyft)の運賃がベンチマークになっており、あまり割安感はありません。先進技術を駆使した自動運転車では、車体にもシステムにも多額の開発費が掛かっているのが実情です。




ロサンゼルスでの走行は、非常に安全で安定していました。サンフランシスコでは、システムのスタックと、それを解消するための遠隔監視者からの介入を複数回経験しましたが、 ロサンゼルスでは一度も介入は無く、すべて自動運転で対処できていました。 ロサンゼルスは、リトル・トーキョーなどの観光エリアを除いて、歩行者や自転車の往来が少なく、車対車の対処が主でした。大都市であるものの自動運転システムにとっては走りやすい環境だと言えます。
それでは、最後に動画(2分30秒、音声なし)をどうぞ!
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*1 Waymo “Waymo One is now open to all in Los Angeles”, Nov. 12, 2024
*2 Waymo Oneアプリ Announcements, Jan. 12, 2025
*3 Waymo公式X 2025年1月29日の投稿
*4 Los Angeles Times “Waymo is getting ready to tackle Los Angeles’ freeways. How have the robotaxis fared so far?”, Jan. 29, 2025