続・大阪・関西万博の入場者数は目標達成できるのか?
~可能なれど、目標達成を確実とするためには「夜間券」が鍵~
・「Topics Plus:大阪・関西万博の入場者数は目標達成できるのか?~地元在住者による後半の大きな伸びが鍵~」(2025年4月15日公開)は【こちらをクリック】
・「Topics Plus:「並ばない万博」の不都合な真実~人気の企業パビリオンの予約には不満一杯~」(2025年6月6日公開)は【こちらをクリック】
・「Topics Plus:目立つ海外パビリオンの存在感~「行列上等!」とコト消費への対応で来場者を魅了~」(2025年6月6日公開)は【こちらをクリック】
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1.開幕から約2か月経過した大阪・関西万博の現況から考察する
大阪・関西万博は、2025年4月13日の開幕前から様々な批判も期待も浴びながら、開幕当初の4,5月が経過したが、いまなお入場者数が目標に達するのかどうかに、大きな注目が集まっているのは間違いない。
そこで本稿では、大阪・関西万博の入場者数が目標に達するのかについて改めて考察したい。筆者は開幕直前の状況を踏まえて「Topics Plus:大阪・関西万博の入場者数は目標達成できるのか?~地元在住者による後半の大きな伸びが鍵~」(2025年4月15日公開)を記しているが、本稿は開幕後の動向を踏まえた改訂版となる。また、別稿では実際に現地で体験したことなどを参考に、目標達成への課題やその課題の克服策も合わせて検討したい。
2.開幕後の入場券の売れ行きは順調で、入場者数の目標達成の可能性大
開幕前の前売りの入場券の累計発売数は969万枚。そのほかに、修学旅行など旅行会社発売分で230万枚ほど見込みがたっているとされる。しかし、これらを合わせても開幕前の目標である1,400万枚に及んでおらず、そのため、会期を通じた入場数の目標(2,820万人)の達成が危ぶまれている。
そこで、開幕後の入場券発売数に着目しよう。開幕後の目標販売数は900万枚で、開幕前の1,400万枚と合わせて2,300万枚の発売が全期間を通じた目標となっている。入場券の発売数と入場者数について、愛・地球博(2005年開催)と比較すると、愛・地球博の入場券発売数は1,720万枚で、その1.28倍の2,205万人が入場者数となった。この1.28倍を大阪・関西万博の目標である2,820万人に適用すると、入場券発売目標は2,200万枚になる。つまり、大阪・関西万博の目標入場館販売数である2,300万枚は、入場者数の目標2,820万枚を達成するには十分だったわけだ。
大阪・関西万博の入場券における開幕後の発売状況は、図表1にあるように、修学旅行など旅行会社発売分を除いた、5月30日までの発売数は1,292万枚で、開幕前の969万枚を差し引いて、開幕後の1日平均発売数は7週目まで7万枚弱にのぼる。この1日平均販売数がこのまま会期末まで続くと仮定すると、開幕後の発売数は1,238万枚に達する。この推定発売数は開幕後の目標である900万枚を300万枚強超過している。会期前の発売数969万枚+会期前の旅行会社発売分230万枚+開幕後の推定発売数1,238万枚で、合計2,436万枚。前売り券の目標不足分を補って、会期全体の目標の2,300万枚を上回る売れ行きとなっている。このように、開幕前の入場券の売れ行きは目標に対して苦戦していたが、開幕後の売れ行きは順調といえる。

前述の会期全体の入場券発売推定数に、愛・地球博の入場者数÷入場券の比率1.28倍を乗じると、入場者数は3,123万人となり、3,000万人超えの可能性すら見えてくる。この入場券発売数には、世間で入場者数の水増しと揶揄されることもある、関係者向け入場証(AD証と呼ばれる)は含まれない。開幕後の好調な入場券発売を考えると、関係者抜きに目標の入場者数2,820万人は十分に可能である。
3.開幕後の入場者数からみると、目標入場者数はわずかに下回る可能性も
7週目までの入場者数の推移を愛・地球博と比較しよう。愛・地球博は7週目まで累計で392万人であるのに対し、大阪・関西万博は関係者を除いて477万人で愛・地球博の1.22倍。この倍率を愛・地球博の最終入場者数2,205万人にかけると2,653万人となる。開幕日の関係で、データでは愛・地球博が7週目までが合計49日で、大阪・関西万博が48日となっていることを考え合わせると、これまでの入場者数から推定される大阪・関西万博の入場者数は目標の2,820万人をわずかに下回る。
つまり、大阪・関西万博のこれまでのペースは大幅に劣っているのではなく、目標達成に向けて、愛・地球博のような、今後の入場者数の伸びがあるのかが焦点となる。開幕1か月前から入場者数が急激に伸びるのは駆け込み需要が顕在化するためと推察される。大阪・関西万博では5月30日の時点で1,500万枚強の入場券発売数にも関わらず、入場者数は500万人弱に留まっており、1,000万枚を超える未使用の入場券がある。大阪・関西万博でも愛・地球博同様に駆け込み需要が起こり、後半の入場者数が大きく増加すると予想されよう。
4.目標達成の鍵はやはり「夜間券」
このように、開幕後の入場券発売数と入場者数をみると、入場者数の目標達成に向けて悲観あふれる状況ではない。しかし、楽観できる状況といえないのも事実である。目標達成をより確かにするため、何らかの策が必要であろう。具体的には、愛・地球博で入場者数が伸び悩んだ、気温が上昇する季節と、閉幕前の混雑時期の対応といえる。
大阪・関西万博の標ぼうする「並ばない万博」は各種事前予約と表裏一体だ。入場日、入場時間、入場ゲート、パビリオン・イベントの一部について事前予約が必要だが、ライトユーザーにはかなりわずらわしい。やはり、入場者数の目標達成に向けて、事前予約の必要がない「当日券」で楽しめることが必要だ。
この当日券には「平日券」「1日券」「夜間券」があるが、そのうち今後注目されるのは「夜間券」である。筆者が実際に大阪・関西万博に何度か来場したうえでの感想として、パビリオン内部を見学するという意味では、開幕後2か月の入場者数ですでにキャパシティに余裕はあまりない。したがって、今後、入場者数が増加する中で万博を楽しむには、気温がやや低下する夜間にパビリオンの見学無しでも楽しんでもらうことが重要となろう。
現在、予約不要の夜のイベントとして夜の噴水ショー1やドローンショーが大きな話題になっており、パビリオン内部の見学がなくても十分楽しめる。また、海外パビリオンを中心に凝った外観のパビリオンが多く、それらはライトアップされた夜間により映える。会期後半になって、あまりの混雑で満足にパビリオンを見学できない状態に陥るのは愛・地球博でも見られたことであるが、万博を少しでも楽しみたいというライトユーザーにとって、当日券の夜間券こそ入場者数の目標達成の鍵を握っているといえよう。
開幕後の主な入場券別の販売数の推移をみると(図表2)、夜間券は順調に伸びている。夜間券では「トワイライトキャンペーン」として、5月7日から従来の入場開始時間が17時から16時入場に前倒しになった。また、閉場時間について、現在の22時を23時へ延長することも検討されている。さらなる夜間券の魅力増大が図られれば、入場者数の目標達成により近づくこととなろう。

- 噴水ショーについては、水質の問題により6月5日から休止された。執筆時点で休止期間は未定である。夜の噴水ショーは人気イベントであったので、夜間券の売れ行きへの影響が懸念される。