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今後は東京一極集中以上「多極集住」へ~地域別将来推計人口から見る2050 年の地域①~

上席研究員 岡田 豊

国立社会保障・人口問題研究所の最新の地域別将来推計人口によると、全国に占める東京圏の人口割合、つまり人口集中度は緩やかに上昇し、東京一極集中は継続する。その一方、半数以上の道府県で県庁所在地等の地域経済の中心都市人口の割合は、東京圏の人口集中度以上に大きく上昇する。つまり、今後は東京一極集中以上に「多極集住」が進む。今回の推計ではコロナ禍以降の人口移動はあまり反映されておらず、不確実性が残るものの、東京一極集中を是正して地方分散を進めるためには、コロナ禍前からの傾向である多極集住に対応した政策を構築する必要がある。 【内容に関するご照会先:ページ下部の「お問い合わせ」または執筆者(TEL:050-5363-4383)にご連絡ください】

1.はじめに

全国の都道府県、市町村、東京都区部、政令指定都市における行政区の、それぞれの2050年までの将来推計人口『日本の地域別将来推計人口(2023年推計)』が、国立社会保障・人口問題研究所から2023年末に発表された。前回は2015年の国勢調査を受けて2018年3月に公表されたが、新型コロナウイルスの影響により全国の将来推計人口の公表が遅れたこともあって、地域別将来推計人口も遅れて公表された。

この地域別将来推計人口は、地域社会の将来像を表す基本的な指標である。日本全体の人口は2008年をピークに減少し始めたが、地方圏ではそれより早く人口減少が進んだところが多いこともあって、人口減少への危機感は大都市圏よりも地方圏において強い。

そこで本稿では、今回の地域別将来推計人口から今後の地域別人口の特徴について考察したい。

なお、結果を概観する前に、将来推計人口の推計方法の特徴を知っておく必要がある。地域別将来推計人口は、2023年4月に公表された日本全体の将来推計人口とともに、基本的に5年に1回の国勢調査の間の人口動向を反映して推計され、都道府県別人口や市区町村別人口の合計は日本全体の将来推計人口と一致している。国勢調査の間の人口動向を反映する手法としては、国立社会保障・人口問題研究所のこれまでの将来推計と同様に、社会経済の今後の変化の予測を反映させたものではなく、これまでの変動が今後も続くと仮定した「投射」であることを念頭に置く必要があろう。

特に、人口移動は経済社会動向に影響を受けやすい。そこで、人口移動については、直近の2015年~2020年だけでなく、2005年~2010年、2010年~2015年も加えた3期間の平均的な動きが今後も続くと仮定されている。さらに今回は、国勢調査(2020年10月実施)の前後から死亡や移動等においてコロナ禍が地域別人口動向に大きな影響を与えたことが加味され、2020年~2025年については毎年のデータがわかる総務省「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数調査」で見られる動きも反映されている。

2.東京一極集中は今後も続く

今回の地域別将来推計人口によると、2015年から2020年にかけて人口が減少した39道府県において、今後人口が反転上昇するところはない。このように、人口減少が一度始まった地域は反転上昇が極めて難しいと推計されている。また、2015年から2020年にかけて人口が増加した8都県のうち東京都以外の7県も、2020年から2025年にかけて減少に転じる。特に注目されるのは沖縄県だ。前回の推計では沖縄県の人口減少が始まるのは2030~2035年であったが、その時期が大幅に早まっている。

人口減少対策としては、少子化対策等の自然増減対策と転入・転出等に働きかける社会増減対策が考えられる。しかし、少子高齢化が大きく進展する中でどの地域でも死亡数の増加のインパクトが大きいため、それを補うほど効果的な出生促進策が難しいことは、都道府県別では最高の出生率を誇る沖縄県の事例からも明らかだ。また、2025年以降唯一人口が増加する東京都でも2040年~2045年についに人口減少社会に突入する。東京都は転入超過により非常に大きな恩恵を得ているが、将来の人口減少を避けることができない。今回の将来推計では人口移動がない「封鎖人口」もシミュレーションされているが、その封鎖人口では東京都は2020年~2025年に減少してしまう。

次に、2050年の人口を2020年比で見ると、増加するのは東京都だけである(図表1)。沖縄県はわずかな減少にとどまるが、それ以外は2020年~2050年に大きく減少する。その中で減少が際立つのは大阪圏(大阪府、京都府、兵庫県、奈良県)だ。2020年~2050年の大阪府の人口減少率は▲17.8%で、東京圏(東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県)の4都県や愛知県、福岡県といった全国有数の大都市を抱える県より減少率がかなり大きい。

また、東京一極集中は、長期にわたり地域別人口動向の大きな特徴である。そこで、全国に占める都市圏の人口割合(人口集中度)を見ると、東京圏は2020年の29.3%から2050年の33.7%へ、4.4%ポイント上昇する。一方、名古屋圏(愛知県、岐阜県、三重県)はほぼ変わらず、大阪圏は微減となっており、今後も東京一極集中が進行する。

3.今後のトレンドは地域経済の中心都市に人口が集中する「多極集住」

地域別将来推計人口を市区町村(政令指定都市の区は含まれない)別に見ると、2050年の人口が2020年比で上回る地域は約1,700のうち77となっており、極めて例外的存在といえる。そのうち東京圏に属する市区町村が45と半分以上を占めており、東京圏一極集中の強さが見て取れる。

都市への人口集中である。前述のように、ほとんどの道府県で人口が大きく減少するが、地域経済の中心都市ではわずかに人口が増加し、または人口が減少していてもそのペースが緩慢であるため、道府県に占める中心都市の人口割合=人口集中度は上昇する。2020年から2050年にかけて、県庁所在地のほとんどで人口集中度は上昇する(図表2)。さらに、その人口集中度の上昇度合い(%ポイント)において、東京圏(4.4%ポイント)を上回る。例えば、都道府県単位で今後最も人口減少が進む秋田県でも、秋田市の人口減少は緩慢である。そのため、秋田市の人口集中度(秋田県に占める秋田市の人口)は2020年の32.1%から2050年の39.4%まで高まる見通しである。2100年までの人口減少社会への対応方針を提言した人口戦略会議「人口ビジョン2100」(2024年1月公表)では、このような状況を「多極集住」と表しているが、今後は東京一極集中以上に多極集住が進展することがわかる。

4.政令指定都市では都心エリアで人口が増加

日本を代表する大都市といえる政令指定都市であっても、今後の人口増加は容易ではない。20ある政令指定都市で、2050年の人口が2020年比で増加するところは川崎市、さいたま市、福岡市の3つにとどまり、また最高の人口増加率となる川崎市でも 4.4%となっている(図表3)。また、政令指定都市の多くで2020年~2050年の人口増加率が▲10%を下回る。その結果、今後、人口ランキングでいくつか異変が見られるであろう。例えば、2023年に150万人を下回ったとして話題となった神戸市は、2020年に30万人という大きな差をつけていたさいたま市を今後下回ってしまうだけでなく、同じ大阪圏の京都市より人口減少率が大きいので逆転されてしまう。また札幌市の人口は、2020年では福岡市を約40万人上回っていたが、2050年ではその差が約10万人まで縮小する。その福岡市も川崎市より人口増加率が低いため、2050年はその差はわずか約2万人となっている。このため、2050 年代以降の早い段階で、自治体の人口ランキングは川崎市、福岡市、札幌市の順となろう。一方、2050年の東京都区部の人口は2020年比で5.4%増加するが、これはどの政令指定都市よりも人口増加率が高い。このように東京都区部や川崎市の、都心エリアに位置するか近いという強みが政令指定都市の人口動向に反映されている。

次に、東京都区部と政令指定都市の行政区における人口増加率(2020~2050年)の上位15位を見ると、東京都区部の12区が多くを占めており、ここでも東京圏の強さが目立つ(図表4)。その一方で、東京圏以外からランキング入りした3つの行政区が並ぶ大阪市では、2050年の人口が2020年比で▲11.7%であるにも関わらず、都心エリアの人口増加が著しい。大阪市で都心エリアといえるJR 大阪環状線の内側とその周辺に位置する「大阪都心6区」(北区・中央区・西区・天王寺区・浪速区・福島区)の人口増加率は高く、その結果、大阪都心6区の人口が大阪市に占める割合=人口集中度は21.3%(2020年)から26.0%(2050年)まで5%ポイント高まる。大阪市は都心の中心的なエリアに人口が集中しているといえよう。

こうした都心エリアへの人口集中は他の政令指定都市も同様に見られる現象である。例えば、政令指定都市として4番目の人口規模を誇る札幌市は2020年から2050年にかけて人口が大きく減少するが、同市では都心エリアの中央区だけ人口が増加する。同市中央区は、札幌駅周辺、大通り公園、すすきのが含まれており、2030年度の北海道新幹線札幌延伸を見越して巨大再開発が相次いでいる(図表5)。

5.アフターコロナの人口動向から今回の将来推計地域別人口をどう考えるのか

前述のように、今回の推計は基本的に国勢調査が行われた2020年10月までの人口動向を反映したものであるため、コロナ禍の影響はあまり反映されていない。そこで、コロナ禍前を振り返ると、人口移動では90年代半ばから東京圏は転入超過が継続し、リーマンショックで転入超過数は一時的に減少したものの、その後は再び転入超過数が増加している。東京一極集中が加速化していた時期の傾向が、今回の地域別将来推計人口に及んでおり、東京一極集中が加速する未来が描かれている。

しかし、コロナ禍で東京圏の転入超過数は一気に減少した。その後、徐々に戻りつつあるものの、2023年の日本人における東京圏の転入超過数は11万4802人で、コロナ禍前の2019年の14万5576人に戻っていない。2023年の年齢別の転入超過数を2019年比で見ると、20歳~24歳と25歳~29歳では小幅であるものの、全ての年齢階級でコロナ禍前を下回っている(図表6)。

これらから、日本人人口の地方分散の動きは、コロナ禍下に比べて収まりつつあるものの、コロナ禍前の2019年に比べると一定割合で定着していると推察される。一方、アフターコロナの対面型産業、特に外食、小売業において若者の人手不足が厳しい。そのため、対面型産業の採用意欲は非常に高く、賃金の高い東京圏に若者が転入していると考えられよう。

また、外国人における東京圏の転入超過数を見ると、2023年は11,713人で、コロナ禍前の3,207人(2019年)に比べては大幅に増加している。この増加分の75%は20歳代となっており、外国人でも日本人同様に対面型産業の人手不足を背景に若者が東京圏に集まりつつあるのであろう。

外国人については、2023年の入国超過数は過去最高の約30万人となっており、これは今回の推計に用いられた前提条件の2倍に相当する大きな数字となっている。転社可能な特定技能の業種拡大、技能実習の制度改正(以前は転社不可能であったが、改正後は転社可能となる予定)などから、賃金の高い東京圏や東京都に流入する外国人は今後さらに増加する可能性がある。

これらを考え合わせると、賃金の高い対面型産業が多い地域経済の中心都市へ、周辺市町村から人口移動は続くであろう。その一方で、今後の東京一極集中については、日本人のリモートワークと対面型産業を中心とする人出不足や外国労働者の入国超過という、いくつかの相反する要因の影響を受けると思われる。

6.おわりに

今回の推計は、アフターコロナの人口動向の反映が限定的であるため、推計結果の不確実性に留意すべきであるが、今後の地域別人口の大きな特徴は、東京一極集中以上に、地域経済の中心都市への集中である「多極集住」、さらには政令指定都市内の都心エリアへの集中である。三大都市圏や出生率が高い沖縄県を除けば、今後の人口増加が期待できる、もしくは人口減少が緩慢にとどまる都市は、県庁所在地や地域経済の中心都市、そしてその都心へのアクセスの良い周辺都市にほぼ限定されよう。そのため、東京一極集中を是正し、人口の地方分散を進めるためには、地域社会の中心都市が周辺地域から若者を集め、東京圏へ若者が転出超過している「破れたバケツ」の改善に大きな力を割くべきであろう。また、地域経済の中心都市以外の市区町村では、高い人口減少率を前提とした地域社会の構築が大きな課題となる。

次回のレポート「今後、子どもや高齢者も「多極集住」~地域別将来推計人口から見る2050年の地域②~」では、東京一極集中や多極集住を年齢別に考察する。

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