シティ・モビリティ

大都市で人口減少は進むも、集中度は高まる
~国勢調査による日本人口の特徴②~

上席研究員 岡田 豊

2025年の国勢調査人口等基本集計によると、人口減少が大都市にも拡大している。都道府県別で2020~2025年にかけて増加したのは東京都のみである。また、20の政令指定都市と特別区部(東京都23区計)を見ると、人口減少したのは札幌市、仙台市、横浜市を含む14市で、人口減少から無縁と思われていた大都市でさえ、人口減少が避けられないことがわかる。一方、政令指定都市のような大都市はたとえ人口が減少しても、周辺の他の自治体より減少率が緩慢であるため、大都市が所属する都道府県に対する大都市の人口割合は増加する。今や東京一極集中以上に、地域経済の中心都市に人口が集まるという「多極集住」が地域別人口の大きなトレンドといえよう。
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1.はじめに

総務省統計局より9月29日に2025年の国勢調査の人口等基本集計が発表された。国勢調査の確定値としては第一弾であり、今後、就業状態、移動人口、従業地・通学地などに分けて公表される。
 国勢調査は日本に住んでいる全ての人と世帯を対象にして5年に一度実施される、官民ともに重要な統計である。そこで今回は、国勢調査の人口等基本集計から地域別人口に関する日本人口の特徴を考察する。
 なお、日本全体の人口動向に関しては、別稿「Insight Plus 外国人増加が日本の生産年齢人口の減少を緩和~国勢調査による日本人口の特徴①~」を参照して欲しい。

2.東京都以外は全て人口減少

都道府県の人口増加率を見ると(図表1)、2015~2020年にかけて減少していた37道府県は全て、2020~2025年の人口減少率が拡大しており、人口減少が加速している。また、2015~2020年に人口増加した8つの都県のうち、2020~2025年も増加したのは東京都だけである。
 東京圏の埼玉県・千葉県・神奈川県、名古屋圏の大都市を抱える愛知県、大阪圏の巨大ベッドタウンである滋賀県、九州随一の大都市を抱える福岡県、都道府県で最も出生率が高い沖縄県の7県は、2020~2025年に人口減少に転じた。
 しかも、唯一増加した東京都も今後は安泰ではない。2020~2025年の人口増加率+1.3%は2015~2020年の+3.9%に比べると大幅に減少しているからだ。次回2025~2030年では、東京都も人口減少に転じて、全ての都道府県が人口減少に陥る可能性が高い。
 なお、沖縄県は人口速報集計では2020~2025年にわずかの増加と5月に発表されたが、今回の人口等基本集計の確定値ではわずかに減少となった。このように、人口速報集計に比べて確定値にあたる今回の人口等基本集計は多くの項目でわずかに小さめの数値となる傾向があることに留意したい。

≪図表1≫都道府県別人口増加率

(注)2020~2025年の人口増加率の大きい順に左から並べたもの。

(出典)総務省統計局「国勢調査報告」(2025年)より、SOMPOインスティチュート・プラス作成

3.大都市でも人口減少が広がる

20の政令指定都市と特別区部(東京都23区計)の21の大都市を見ると(図表2)、2015~2020年は21のうち8市で人口が減少したが、2020~2025年は過半数を超える14市で減少した。新たに人口減少に転じたのは、札幌市、仙台市、横浜市、相模原市、岡山市、広島市の6市で、特に三大都市圏に属し、市町村で最大の人口を抱える横浜市や、三大都市圏以外の大都市「札仙広福」のうち、福岡市以外の3市での人口減少が注目される。これまで人口減少から無縁と思われていたような大都市でさえ、人口減少が避けられないことがわかる。
 また、2015~2020年に続いて2020~2025年も増加した6市+特別区部も、先行きは決して楽観できない。2期連続で人口が増加していても、ほとんどで人口増加率が減少しているからだ。特に、さいたま市(2015~2020年+4.8%、2020~2025年+1.6%)、川崎市(同+4.3%、+1.4%)、名古屋市(同+1.6%、+0.6%)は、人口増加率が大きく減少して低水準に至っているため、2025~2030年は人口減少に転じる可能性があろう。
 政令指定都市のような大都市は、若者が望む働く場を多数抱えており、若者を中心とした転入者が多いことから、長年にわたり人口増加基調にあった。しかし、そのような大都市でも少子高齢化の進展で自然減少(死亡者数が出生者数を上回ること)が拡大しており、自然減少が転入超過数を上回って人口が減少する大都市が続出している。

≪図表2≫政令指定都市と特別区部の人口増加率

(注)特別区部は東京23区計。

(出典)総務省統計局「国勢調査報告」(2025年版)より、SOMPOインスティチュート・プラス作成

4.競争激化するベッドタウン

市町村別の人口減少率上位を見ると、能登半島地震の影響が大きく、被災市が上位に並ぶ。また、被災地以外で人口減少率が高い自治体として、夕張市(北海道、2020~2025年▲23.5%)と今別町(青森県、2020~2025年▲19.1%)を取り上げたい。
 夕張市ではインフラ整備や公共サービスの大幅な見直し等による過酷な財政再建が進められる中、少子高齢化と人口流出の進展に歯止めがかからず、人口減少が加速している。2026年度中にも過酷な財政再建のもととなった国への借金を完済する予定であるが、その後の財政状況も引き続き楽観できないため、今後の人口動向が注視される。また、今別町は2016年の北海道新幹線新函館北斗駅への延伸に伴って奥津軽いまべつ駅が設置されたが、新幹線開通後も人口減少が加速している。近年、いくつかの整備新幹線の新たな構想が提案されているが、人口への好影響が必ずしも期待できるわけではないことに留意したい。
 一方、2020~2025年の人口増加率上位20位を見ると(図表3)、2015~2020年に続いて、帰還が徐々に進んでいる東日本大震災の原子力災害の被災地が上位に並ぶ。その原子力災害の被災地以外で人口増加が目立つのは、政令指定都市や県庁所在地などの郊外に立地する自治体である。しかし、2015~2020年と2020~2025年で共に上位20位に入ったのは流山市と印西市(共に千葉県)の2つだけである。ベッドタウンへの主な転入世帯は子持ち世帯であるが、少子化の進展で少なくなった子持ち世帯を数多くのベッドタウンで奪い合うことになる。さらに、都心居住志向が根強いと思われる夫婦共稼ぎが子持ち世帯において増加している。都心を中心とする住宅価格の急激な上昇もあって、居住地を巡る都心VSベッドタウンの行方は判然としないが、ベッドタウンが安定して人口増加が期待できる時代ではなくなりつつある。

≪図表3≫市町村別人口増加率上位20位

(注)原子力災害により, 2020年に人口が0人であった福島県双葉町は2020~2025年のランキングに含まない。同様に、2015年に人口が0人であった福島県富岡町、福島県大熊町、福島県浪江町は2015~2020年のランキングに含まない。青の網掛けは主にベッドタウン。

(出典)総務省統計局「国勢調査報告」(2025年版)より、SOMPOインスティチュート・プラス作成

5.大都市では人口集中度が高まる

このように、大都市であっても人口減少が進んでいるが、一方で大都市の存在感が高まっていることも事実である。例えば、2020~2025年に人口減少に転じた仙台市を例に見ると(図表4)、宮城県における仙台市の人口割合(人口集中度)は1988年に泉市、宮城町、秋保町を合併したことで1990年に一気に上昇した後も増加し、2025年には49.3%とほぼ過半数となっている。参考までに、東京圏(東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県)の人口が全国に占める割合は、バブルの頃からわずかに増加したものの、宮城県における仙台市の人口割合よりも低い水準にとどまっている。
 人口減少が進んでも人口集中度が高まる自治体は、政令指定都市だけでなく、県庁所在地などの地域経済の中心都市の多くにも当てはまる。地域経済の中心都市はたとえ人口が減少しても、周辺の他の都市より緩慢なためだ。今や東京一極集中以上に、地域経済の中心都市に人口が集まるという「多極集住」が地域別人口の大きなトレンドといえよう。

≪図表4≫宮城県の人口に占める仙台市の割合と全国の人口に占める東京圏の割合

(出典)総務省統計局「国勢調査報告」(各年版)より、SOMPOインスティチュート・プラス作成

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