シティ・モビリティ

返礼品競争の先に問われるふるさと納税の持続性
~ふるさと納税のポータルサイト運営事業者への支払額を公表~

上級研究員 福嶋 一太

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  ※執筆者による本件以外のふるさと納税に関するレポートはこちらをご参照ください。
   「利用額が1兆円を突破したふるさと納税の課題 ~課題解決に向けた制度根幹に係る議論が求められる~
   「ふるさと納税の控除額に上限設定へ ~抜本的な制度見直しにはコスト構造の見直しも必要~

総務省は2026年5月12日、「ふるさと納税のポータルサイト運営事業者への支払額等に係る調査結果」を公表した。これによると、2024年度のふるさと納税の受入額は1兆2,728億円であり、このうちポータルサイトを経由した受入額は全体の94.5%にのぼる1兆2,025億円であった。このように、ふるさと納税は、実務上、ほぼポータルサイトを通じて利用される制度になっている。また、ポータルサイト運営事業者への支払総額は2,559億円であり、ポータルサイト経由受入額に対する割合は21.3%に達している。返礼品の調達や送付に要する費用を除いた支払額も1,379億円(図表)、同11.5%に上る。

【図表】ポータルサイト運営事業者への支払額(2024年度実績)

(出典)総務省「ふるさと納税のポータルサイト運営事業者への支払額等に係る調査結果

ふるさと納税は、もともと生まれ育った地域や応援したい自治体に寄附できる制度として設けられた。しかし、制度の利用が広がるにつれて、寄附者にとっては多くの返礼品から選んで購入し、自治体にとっては寄附額を競うという性格が強まった。その過程で返礼品の内容や還元率が注目され、自治体間の競争が過熱したことは、これまで繰り返し指摘されてきた。
 こうした状況を受け、国は返礼品に関する見直しを進めてきた。返礼割合を寄附額の3割以下とすることや、返礼品を地場産品に限ることを求め、2019年には指定制度も導入された。近年では、ポータルサイトによるポイント付与も見直され、返礼品やポイントで寄附を集める競争に一定の歯止めをかける方向が強まっている。

しかし、今回の総務省調査を見ると、返礼品の上限を設けるだけでは、制度の問題を十分に捉えきれないことも分かる。返礼品の調達費が3割以内であっても、送料、広告費、決済手数料、ポータルサイトへの委託料、事務費などが積み上がれば、実際に地域の事業に回る財源はその分小さくなる。ふるさと納税を考えるうえでは、返礼品が豪華かどうかだけでなく、寄附金のうちどれだけが地域に残るのかという視点が欠かせなくなっている。

もっとも、ポータルサイトの役割を一方的に否定することはできない。返礼品を検索し、比較し、決済し、納税額控除の手続きを容易に終えることができるという、まるでECと同じ感覚で捉えることができる仕組みがあったからこそ、ふるさと納税はここまで広がった。ほとんどの自治体にとって、寄附者との接点づくりや返礼品管理をすべて自前で行うことは容易ではなく、ポータルサイトは自治体の情報発信や寄附獲得を支える入口として機能してきた面がある。
 ただし、ポータルサイトに利便性があるからといって、そこで生じる費用を通常のECと同様に捉えることはできない。ふるさと納税の原資は寄附金であり、住民税控除を通じて公的財源とも結びついている。通常のECであれば、手数料や広告費は販売促進費として整理できるが、ふるさと納税では、その分だけ地域に回る財源が小さくなる。ポータルサイトの役割を認めるとしても、経費がどの程度かかり、寄附金がどれだけ地域に残るのかをあわせて見る必要がある。

今後の制度見直しでは、返礼品の調達費だけでなく、送料、広告費、決済手数料、ポータルサイトへの委託料、事務費などを含めた経費全体に目を向ける必要がある。寄附額のうち、どれだけが返礼品や手数料に使われ、どれだけが地域の事業に回ったのか。自治体ごとにその内訳が分かりやすく示されれば、寄附者や住民にとっても、制度の実態を確認しやすくなる。
 一方で、ふるさと納税に係る経費全体を抑えるだけでは、ふるさと納税は単に「返礼品の魅力が下がる制度」と受け止められかねない。そこで重要になるのが、寄附金の使い道をより明確に示すことである。返礼品を前面に出すのではなく、地域交通の維持、子育て支援、防災、地域医療、観光地の維持管理など、具体的な地域課題や事業を示し、それに対して寄附を募る仕組みを強めていくことが考えられる。クラウドファンディングに近い形といえ、事業の目的、必要な金額、実施内容、成果報告を示すことができれば、寄附者は「得かどうか」だけでなく、「効果的に使われるのか」を見て寄附先を選びやすくなり、制度本来の趣旨に近づくことになるだろう。

ふるさと納税は、自治体に「選ばれる努力」を促してきた。地域産品の発掘や情報発信、寄附者との接点づくりが進んだことは、制度の成果として評価できる面もある。しかし、その競争が返礼品やポータルサイト上での見せ方に偏れば、制度は地域支援ではなく、寄附を集めるための競争に近づいてしまう。
 これから問われるべきなのは、どの自治体が多くの寄附を集めたかだけではない。集めた寄附金のうち、どれだけが地域に残り、何に使われ、どのような効果を生んだのかである。ふるさと納税を将来にわたって意義ある制度として残すのであれば、「返礼品で集める仕組み」から、「地域の課題や事業で選ばれる仕組み」へ近づけていく必要がある。今回の総務省調査は、その方向を考えるうえで重要なきっかけになるのではないだろうか。

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