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2019年9月30日発行 Vol.75

  内 容 (PDFにて全文閲覧できます。)
 
掲載論文: 1. ビジネス・エコシステムとは何か
  2.電動マイクロモビリティブームとドイツにおける受容
〜電動キックボードを中心に〜
  3.中所得国の医療保障改革、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジの道のり
〜増大する医療費と格差の是正、中国・インドを中心に〜
  4. 米国のオピオイド危機と損害保険業界への影響
  5. 途上国におけるインクルーシブインシュアランスの動向
  6. 米国損害保険市場の動向(2018年実績)

 
ビジネス・エコシステムとは何か(PDF0.8MB)
   
 

= 要 約 =
執筆者:取締役 隅山 正敏

   
 

T.はじめに
ビジネスの世界で「エコシステム」という言葉が良く使われているが、様々な局面で補足説明もなく使われることが多く、受け手(受信者)は使い手(発信者)の込めたメッセージを読み解く必要がある。

U.エコシステムはどう使われ始めたか
ビジネス用語としての「エコシステム」は、1990 年代に「共に成長する企業群」という意味合いで使われ、2000 年代に「イノベーションを目指す企業群」という意味合いが、2010 年代に「プラットフォーマーの築く経済圏」という意味合いがそれぞれ加わり、多様な意味合いを持つようになった。

V.エコシステムはどう使われているか
「共に成長する企業群」は当初、サプライチェーンの意味合いで用いられた。「オープンイノベーション」の概念が普及するにつれて「イノベーションを目指す企業群」を指すようになり、また、イノベーションの成果を用いた「起業・スタートアップ」に関連して「起業を生む場」としても使われるようになり、メッセージを読み解く際にも「オープンイノベーション」や「起業・スタートアップ」に関する知識が必要になっている。更に「プラットフォーマーの築く経済圏」や「製品・サービスを際立たせる企業群」という意味合いも加わり、それらを読み解く際の「キーワード」も多岐に及んでいる。

W.エコシステムをどう築くか
上記Vの「キーワード」をエコシステム構築の観点で再整理すると、次の3 つのステップが浮かび上がる。すなわち、第1 に、自社の事業を「ソリューション」で定義し直し、それにそって自社の市場(顧客層)も再定義する。第2 に、築こうとするエコシステムが「ネットワーク効果」を発揮するように、構成員の相互関係(ソリューション志向・インセンティブ設定)を設計する。第3 に、再定義した市場(顧客層)に浸透する上で「不足するパーツ」を供給する企業と連携してエコシステムを築き、「製品・サービスの新たな組合せ」を主体とするイノベーションを目指す。また、企業間の関係を緩やかなものに保ちつつ、ビジョンとデジタル化で求心力を働かせる。

X.おわりに
エコシステムを読み解く際の「キーワード」は、最近のビジネストレンドを反映しており、「エコシステムとは何か」を考え続けることが自社の経営戦略を磨き上げる上で有用になっている。

   
 

電動マイクロモビリティブームとドイツにおける受容
〜電動キックボードを中心に〜(PDF11.1MB)

   
 

= 要 約 =
執筆者:副主任研究員 新添 麻衣

   
 

T.はじめに
玩具だったはずの一輪車などの乗り物が電動化され、最新のテクノロジーを搭載したことで、人々の快適な移動手段に変貌しつつある。この新種のモビリティ群を電動マイクロモビリティとして本稿では取り上げ、前段では米中を起点とした電動マイクロモビリティの興りを概観し、後段では現地取材も交えケーススタディとしてドイツの動向をまとめた。2019 年に入って、本邦でも電動キックボードのシェアリングサービスの実証実験が見られるようになってきたため、先行事例としてドイツに着目したものである。

U.電動マイクロモビリティとは
2000 年代初頭から様々な電動マイクロモビリティが米中で生産されたが、世界的なブームの火付け役 となったのは電動キックボードのシェアリングサービスで2017 年秋に米国で始まった。わずか2 年で欧米からアジア、中東など世界の都市部に広まり、2025 年には全世界で4,000〜5,000 億ドルのマーケット規模になるとの予測もある。スマートフォンのアプリで利用が完結し、車両の乗り捨て自由な利用形態が支持され、ファースト・ラストマイルを担う新たなモビリティサービスと目される。スタートアップや自動車メーカーなどの事業参入が相次ぎ、成長市場だが既に競争は激化している。

V.ドイツにおける電動マイクロモビリティ受容
ドイツでは2002 年から都市交通計画を見直し、"公共交通×自転車・徒歩"で移動が完結する街づくりに戦略的に取り組んできた。このため、外来の電動キックボードのシェアリングサービスを新たな移動の選択肢として活用する土壌があった。「電動小型モビリティの道路交通への参加に関する命令(eKFV)」が2019 年6 月半ばに施行されると、大都市圏を中心に全国で導入が進んだ。市民への交通規則の周知など課題はあるが、自治体とサービスプロバイダーが強固に結束し、公共交通を補完する機能として、また都市交通計画の改善に資する移動データの収集ツールとして電動キックボードの利活用が進められる見通しである。

W.おわりに
ドイツは新種のモビリティである電動キックボードを短期間で社会実装することに成功した。15 年以上の年月をかけて取り組まれてきた既存の政策の延長線上で、徒歩・自転車以外の新たなファースト・ラストマイルの選択肢としての地位を得られたことが大きい。eKFV による全土統一の規制枠組みは、その全国展開を後押しした。MaaS の高度化を目指す各自治体において、電動キックボードがモビリティとして、また同時にデータ収集ツールとしてどのような役割を果たしていくのかは今後も注目される。
※本稿は、主に2019 年8 月末までの情報に基づき作成したものである。

   
 

中所得国の医療保障改革、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジの道のり
〜増大する医療費と格差の是正、中国・インドを中心に〜(PDF1.0MB)

   
 

= 要 約 =
執筆者:主任研究員 海老ア 美由紀

   
 

T.はじめに
世界的に医療費が増加しており対処が求められている。医療費の増加は家計の負担を大きくする。特に経済成長が目覚ましい中所得国では、後回しになってしまった医療保障を拡充し、医療費の自己負担を減らし、家計破綻に至るリスクを軽減することが求められる。事前にファンドを蓄積し、医療保障を通じ医療費支出に対するリスクプールを形成し、経済的なリスクからの保護を拡大していく必要がある。中所得国の中でも2大新興国である中国とインドを取り上げ、医療保障改革の取組みを追いながら、医療保障のカバー範囲を拡大しユニバーサル・ヘルス・カバレッジの達成に向けて進む道のりをたどる。

U.増大する医療費と財源、リスクプール、そしてユニバーサル・ヘルス・カバレッジ
世界的に医療費が増加しており、なかでも中所得国の増加率は高い。中所得国では急速な経済成長や中間層の拡大により医療費の増加は必至である。医療費の財源の中心は公的医療支出であり、WHO は、政策における公的医療支出の優先順位を上げて医療費増加に備えるリスクプールを形成し、また医療保障のカバー範囲を拡大してユニバーサル・ヘルス・カバレッジを達成するよう呼びかけている。

V.中国およびインドの医療保障
中所得国の中核を成す中国、インドが医療保障の改革を進め、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジの達成に向けて進む道のりを追う。中国は改革開放後に医療保障のしくみが崩壊したものの2012 年には人口の95%以上をカバーした。インドは医療費の自己負担割合が6 割を超えているが、貧困層向けの医療保障の大幅なカバー拡大を行っている。それぞれがリスクプールの形成とカバー範囲の拡大に取り組んでいる

W.公的医療保障の拡充と民間医療保険の役割
ユニバーサル・ヘルス・カバレッジの達成に向けWHO を中心に議論されている医療保障の論点のいくつかを取り上げる。経済成長はユニバーサル・ヘルス・カバレッジの推進に寄与するが、政府主導で医療保障改革を進め、公的財源を確保し、格差の是正とリスクプールの統合を図っていくことが求められる。民間医療保険は公的医療保障制度で不足する部分を補う役割を担うが、適切な規制が必要となる。

X.まとめ
急速な経済発展を遂げる中所得国では、家計における医療支出による経済的リスクからの保護の拡大が重要な課題となっている。ユニバーサル・ヘルス・カバレッジを達成するために医療保障の改革が進められており、将来に向けてさらなる拡充が必要となる。

   
 

米国のオピオイド危機と損害保険業界への影響 (PDF1.1MB)

   
 

= 要 約 =
執筆者:副主任研究員 内田真穂

   
 

T.はじめに
本稿では米国社会を揺るがしているオピオイド問題とは何か、どのような背景でそれが引き起こされたのかを概観し、乱立するオピオイド関連訴訟の傾向と訴訟の増加が損害保険業界にもたらす影響、特に賠償責任保険の防御義務の発生有無をめぐる問題について取り上げる。

U.米国を揺るがすオピオイド危機
麻薬性鎮痛薬オピオイドの過剰摂取による死亡者は1999 年以降毎年増え続けており、2013 年以降は死亡者の増加ペースが加速している。オピオイドはもともとがんの疼痛管理に用いられていたが、米国ではがん患者以外の慢性疼痛に対しても処方されるようになった結果、依存症になる者が続出した。オピオイドが浸透した背景には製薬会社による積極的なマーケティングがあり、米国の保険システムもオピオイドの蔓延を助長した。

V.オピオイド関連訴訟
オピオイド関連訴訟が全米各地で乱立している。州や郡はパブリック・ニューサンスの法理の下、製薬会社などを相手取り多数の訴訟を提起している。裁判では企業の詐欺的行為や不適切な流通管理などが追及されている。各地の連邦地裁に提訴された訴訟を併合した広域係属訴訟(MDL)の最初の審判(ベルウェザートライアル)が2019 年10 月から始まる。米司法省は刑事責任を視野に入れた捜査を行っている。州訴訟や司法省による訴訟では、企業が巨額の賠償金(制裁金)の支払いに合意して和解する事例がでてきている。

W.損害保険業界への影響
今後これらの訴訟に係る保険金請求が増えることが予想される。訴訟費用の増加に加えて、賠償金が巨額となれば損害保険業界への影響は小さくない。被告企業と保険会社との間で賠償責任保険の適用をめぐる訴訟も起きている。裁判では州政府の損害賠償請求が「身体障害(bodily injury)」に基づくものといえるのか、企業の詐欺的行為に起因して発生したオピオイドの蔓延が「事故(accident/occurrence)」に該当するのかの2 点が主要な争点となっている。

X.おわりに
オピオイド危機は日本の保険会社にとっても対岸の火事ではなく、米国リスクを引き受ける日本の保険会社には十分なアンダーライティングが求められる。保険会社はオピオイド訴訟に係る賠償責任保険の適用をめぐる議論の行方をMDL の動向とともに引き続き注視していく必要がある。

   
 

途上国におけるインクルーシブインシュアランスの動向 (PDF1.3MB)

   
 

= 要 約 =
執筆者:副主任研究員 林 勝己

   
 

T.はじめに
インクルーシブインシュアランスは保険が十分に提供されていない市場を対象とした保険であり、経済活動を促し、経済的に不安定な状況を軽減するものである。途上国においては金融包摂の進展とともに、モバイルテクノロジー・マネーの発展と普及が原動力となって、インクルーシブインシュアランスを普及させる取組が進められている。

U.金融包摂
途上国では国家金融包摂戦略を策定し、金融サービスのアクセス改善に向けて様々な政策に取り組んでいる。近年ではモバイルテクノロジーの発達と普及により、銀行口座の非所有者がモバイルマネーを通じて金融サービスを利用できるようになった。

V.インクルーシブインシュアランス市場の概況
インクルーシブインシュアランスの市場規模は約20 億ドルとされ、今後も高い成長が見込まれる。大手保険会社は、コンソーシアムの構成やInsurTech 企業への出資などを通じて市場へ参入している。

W.市場・保険の特徴
インクルーシブインシュアランス市場では低廉な保険料だけでなく、利用者の金融リテラシー・経験の乏しさに対応した商品性や販売網が必要とされる。移動体通信事業者を通じて加入するモバイルインシュアランスは、加入から保険金受取まで携帯端末で行えることで、今まで保険にアクセスできなかった層に低コストで保険が提供でき、規模を拡大している。

X.おわりに
インクルーシブインシュアランスの人口カバー率は10%を下回るものの、金融包摂に関する各国の様々な政策やモバイルマネーの普及の後押しを受けて保険が普及しつつある。一方で契約者保護等にかかわる問題も生じており、監督者・事業者が市場の発展に応じた役割を果たしていくことが求められる。

   
 

米国損害保険市場の動向(2018年実績) (PDF0.8MB)

   
 

= 要 約 =
執筆者:研究員 堀田 周作

   
 

本稿では、2018年の米国損害保険市場概況および損害保険会社決算概況を紹介する。
米国損害保険市場は2007年以降ソフトマーケット環境が続いていたが、2017年および2018年に相次いで米国を襲った大規模な自然災害の影響により2018年にマーケットはハード化の兆しを見せた 。個人自動車保険では医療費や修理コスト(高性能車)の増加を受けてレートを改善し、徐々に成果が表れて始めている 。その結果、2018年の損害保険会社の保険引受利益は2015年以来のプラスとなった。

   
 

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