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2020年3月31日発行 Vol.76       ニュースリリース(未来研レポートVol76発刊)

  内 容 (PDFにて全文閲覧できます。)
 
掲載論文: 1. カナダにおける公的健康保険と介護保障制度・民間健康介護保険
〜民間健康保険と民間介護保険の役割〜
  2.実例から読み解くGAFA規制
  3.企業におけるクラウドの利用とそのリスク
  4. 盛り上がるデジタル通貨を巡る議論と今後の展望
〜発行が目されるデジタル人民元を中心に〜
  5. 損害保険における金融ジェロントロジーの活用
〜損害保険の高齢顧客対応の将来像を探る〜
  6. 保険業におけるCSV
  7. 変わりゆくビジネスと人権
〜ESGの主要課題としての労働者の人権への配慮〜

 
カナダにおける公的健康保険と介護保障制度・民間健康介護保険
〜民間健康保険と民間介護保険の役割〜(PDF1.3MB)
   
 

= 要 約 =
執筆者:客員フェロー 小林 篤

   
 

T.はじめに
カナダは公的部門の州・準州が特徴的な方法で独自に健康保険システム・介護保障システムを運営している。特徴ある公的部門という事業環境のなかで、民間健康保険・介護保険の役割と特徴を検討する。

U.現在の健康保険システムの基本構造と法制
健康保険システムの利用は無償でアクセスでき、年齢・経済状態によって妨げられないという基本構造がある。その法制的基礎は1984年立法のカナダ保健法にあり、その理念は今日まで継続している。

V.健康保険システムの沿革
1947年にサスカチュワン州政府による公的病院保険制度創設後、連邦政府は州・準州政府と協定等の締結を通して資金交付している。各州・準州の独自運営だが、基本的に整合した健康保険システムが形成された。

W.無償のメディケアの仕組み
患者は、最初に私的クリニック医師の診察・治療を受け、その医師が必要と判断したときは専門医師または病院に紹介される分業体制を取っている。

X.メディケアに関する課題と様々な意見
患者が治療等を受けるまでの長い待機期間の問題を抱えるメディケアに、私的クリニックで自由な診療を受けられる仕組みを導入する動きがあり、激しい論争が続いている。

Y.民間健康保険の市場構造・役割
民間健康保険の市場は団体中心で、その役割はメディケアの病院・医師サービスで提供されないサービス購入を実現することと限定的に存在する私的なクリニックのサービス購入を実現することである。

Z.カナダの介護保障の概要
介護保障サービスの主体は州・準州であり、その財源は、州・準州の財源だけでなく連邦政府からの移転による資金交付の財源も含まれる。

[.オンタリオ州の事例
カナダ全人口の4割弱と2番目に広い面積のオンタリオ州は、14の地区に分けたローカルコミュニティで在宅とコミュニティの施設を利用して、無料または一部自己負担で介護サービスを提供している。

\.民間介護保険の内容・市場・役割
民間介護保険は家族介護が得られないときや公的な介護サービスが不足するときに有効な解決手段であるが、実際には民間介護保険は長く販売不振が続いてきている。

].カナダの民間健康保険・介護保険の役割・特徴
公的健康保険システムの保障範囲が広く私的クリニックに対する反対意見・反感があることから民間健康保険の役割は限定的であり、高齢化の進行が保険手配を促すほどでないので民間介護保険は販売不振である。

   
 

実例から読み解くGAFA規制(PDF1.0MB)

   
 

= 要 約 =
執筆者:取締役 隅山 正敏

   
 

T.はじめに
GAFAは、2018年を中心として様々な問題事例を引き起こし、各国が「GAFA規制」の検討を行うに至っている。わが国における規制の全体像を国内外における実際の問題事例と対比しながら読み解く。

U.GAFA規制の検討状況
わが国では産業振興の目的で検討が始まり、消費者・事業者の不安・不満に押されて規制色が強くなっている。産業振興と規制強化の両睨みという立ち位置は欧米での検討状況と対照的である。

V.問題事例と規制上の論点
1.対消費者に係る問題事例
個人を識別できないデータ(クッキーなど)を収集した事例ではどうなると保護対象になるか、企業買収に伴い親会社にデータを吸い上げられた事例では利用者の権利をどう保護すべきか、欧州の新規制が適用された事例ではどうすれば有効な同意と言えるのかといった論点が生じている。また、同一事例に対する各国対応が分かれており、どのように法令を執行するかという論点も加わる。

2.対事業者に係る問題事例
販売業者の有する価格決定権に対して端末メーカーが介入した事例と市場運営者が介入した事例がある。当事者の交渉で決まる取引条件について、交渉力の違いを利用して、他社取引を制限した事例と不合理な条件を押し付けた事例がある。いずれも独禁法を適用して事後的に処理されてきたが、取引条件については新たな事前規制が準備されている。

3.市場支配に係る問題事例
検索結果を表示する際に自社サービスを優先した事例、基本ソフト供給先に自社アプリのプレインストールを求めた事例では、競合企業を排除したという事実認定に難しさがあるものの独禁法適用で対処されてきた。企業買収事例では、デジタル市場での競争をどう見るかという事実認定の問題と、潜在的な競合企業の買収(競争阻害行為)にどう対処するかという立法的な問題が生じている。

4.その他の問題事例
電子商取引市場では市場運営と商品販売の両方を担う場合の利益相反問題が、情報発信プラットフォームでは発信されるコンテンツに対して運営者がどこまで責任(メディア責任)を負うのかという問題がそれぞれ生じている。

W.GAFA規制の積み残し課題
消費者取引における個情法と独禁法・通信事業法の重複適用をいつまで続けるのか、情報発信力が強く世論操作に悪用される懸念がある情報発信サービスのメディア責任をどう考えるか、法令を適用して問題を是正する活動を積極的に行うべきか、わが国企業はどのように備えるべきかという課題がある。

X.おわりに
わが国のGAFA規制は実際に発生した問題事例をほぼカバーしている。海外と比較すると法令の適用(執行)が謙抑的であり、産業振興と問題是正のバランスを改めて検証する必要がある。また、わが国企業の方が規制遵守に向けた課題を多く抱えている可能性が高く、準備が急がれる。

   
 

企業におけるクラウドの利用とそのリスク(PDF1.2MB)

   
 

= 要 約 =
執筆者:主任研究員 海老ア 美由紀

   
 

T.はじめに
企業におけるクラウドサービスの利用が進み、クラウド障害が発生したときは事業運営に大きな影響を及すようになり、企業はこれまでとは異なる新たなリスクを抱え込んでいる。本稿ではクラウド障害のリスクとその影響について取り上げる。

U.拡大するクラウドサービスの利用とリスクの所在
世界のクラウドサービス市場は急速に伸びており、日本においても過半数の企業が利用するようになった。クラウドサービスは複数のサービスの組み合わせで構成されており、近年さらに高度化し複雑になってきている。マルチテナント化によってコスト削減を図っているが、リスクも生じている。サービスレベルアグリーメント(SLA)にて利用者の責任範囲が示されており、障害発生時の補償は往々にして利用料の一定割合のみとされている。

V.クラウド障害の発生状況と保険の利用
クラウド障害の多くはハードウェアの不具合やシステムのアップグレード、バグによって引き起こされている。サイバー攻撃を原因とする障害の件数は少ないが、発生すると長期間影響を受ける可能性がある。金額としては事業継続に影響が出たことによる損害が占める割合が高く、情報漏えいを伴った場合はさらに大きな損害となる。また、多くの企業が影響を受けることによって経済全体に影響を与えることにもなる。
損害保険会社のサイバー保険では、サイバー攻撃だけではなく、システムオペレーションミス、システムの管理不備等の過失に起因する事故も対象とし、賠償責任や事故対応費用だけでなく、喪失利益も対象とすることができる。さらに損害保険各社のグループ会社を通じて予防策の提案サービスを行う。

W.情報の収集と開示
クラウドサービスのセキュリティについて第三者機関の評価を参考にすることができる。サイバーセキュリティの強化は重要課題であり、公共機関により情報共有が進められている。クラウドサービス提供業者によるクラウド障害の情報開示も行われているが比較可能性に乏しく、最新の情報を利用した質の高い分析・研究が行われることが望まれる。

X.おわりに
構造を複雑化させながら急速に拡大するクラウドサービスのリスクは、完全に把握することが難しい。グローバル化が進み、広範な情報収集とリスク分析が進められることが望まれる。想定されるリスクについて防御する対策をとり、保険へのリスクの移転や万が一発生した場合の事後策の検討を進めることが促される。

   
 

盛り上がるデジタル通貨を巡る議論と今後の展望
〜発行が目されるデジタル人民元を中心に〜 (PDF1.3MB)

   
 

= 要 約 =
執筆者:研究員 菊武 省造

   
 

T.はじめに
2019年以降、Libraやデジタル人民元などデジタル通貨に関する話題が耳目を集めている。本稿では、通貨のデジタル化を巡る足元の動向やその背景について示した上で、デジタル通貨の今後を展望する。

U.CBDCとは何か
CBDCとは、中央銀行が発行するデジタル通貨であり、いくつかの類型に分かれる。個人や企業にとって身近なのは、スマホアプリ等に中央銀行から電子的通貨がチャージされるトークン型CBDCである。

V.デジタル通貨が現実性を帯びるようになった背景
デジタル通貨の可能性が高まった背景として、ブロックチェーン技術の開発やグローバル・プラットフォーマーの誕生という環境要因と、国際社会における米国の緩やかな地位低下といった構造要因を指摘できる。

W.注目すべき発行主体の動き
FacebookのLibraは、国際的な批判も多く、現時点で発行の見通しは立っていない。中国のデジタル人民元は主要国初のCBDCになるとみられる。一方、最近になって日米欧もCBDCの研究を積極化している。

X.今後のシナリオ
デジタル人民元は、当面は国内リテール決済にのみ用いられると想定されている。ただし、中長期的にデジタル人民元の海外利用が進めば、国際金融秩序に大きなインパクトをもたらし得る。

Y.おわりに
日米欧の主要国は、デジタル人民元の海外利用も視野に入れた対応に今から着手する必要があろう。日本には、基軸通貨国である米国をうまく巻き込むことも含め、国際連携の舵取り役となることが求められる。
※本稿は、主に2020年2月末までの情報に基づき作成したものである。

   
 

損害保険における金融ジェロントロジーの活用
〜損害保険の高齢顧客対応の将来像を探る〜 (PDF2.3MB)

   
 

= 要 約 =
執筆者:副主任研究員 岡島 正泰

   
 

T.はじめに
高齢化に伴い、金融機関の高齢顧客対応に様々な課題が生じている。その課題への対応に、高齢化に伴う金融分野の課題を医学、社会学、テクノロジー等の様々な学問分野から学際的に捉える「金融ジェロントロジー」という学問が活用されている。損害保険会社が、金融ジェロントロジーを活用してどのように高齢顧客対応に取り組んでいくべきか検討する。

U.高齢化に伴い金融機関で生じている課題と原因
金融機関では、認知能力が低下した高齢顧客への対応や、高齢顧客の消費者被害・詐欺被害の防止等が大きな課題となっている。この課題は、認知症患者の増加等の社会環境の変化、成年後見制度等の認知能力が低下した高齢者を支援する制度の利用者数の伸び悩み、それによる家族や制度による支援を受けられない高齢者の増加、高齢顧客の保護に関する法規制の強化等が原因となり生じている。

V.金融ジェロントロジーを活用したサービス等の動向
金融機関の高齢顧客対応の課題とその原因を、金融ジェロントロジーを活用して解決しようとする取組が始まっている。高齢顧客の認知能力の判定、認知能力が低下した高齢者の金融取引の支援、金融機関職員等の教育、認知能力が低下した高齢者を支援する制度を補完するサービス、金融業界の枠を超えた地域連携等の取組が注目される。これらを概観した上で、それぞれの取組に金融ジェロントロジーがどのように活用されているかを紹介する。

W.損害保険における金融ジェロントロジーの活用
損害保険の高齢顧客対応の取組は、損害保険代理店制度等の事業特性を踏まえながら、金融ジェロントロジーを活用して進んでいくと考えられる。

X.おわりに
認知能力が低下し家族や制度による支援を受けられない高齢者が増加しているという社会的課題に対する、損害保険会社による新たな価値提供の在り方を探るため、今後も金融機関および損害保険会社における金融ジェロントロジーの活用事例について調査を継続していきたい。

   
 

保険業におけるCSV (PDF1.5MB)

   
 

= 要 約 =
執筆者:副主任研究員 吉田 順一

   
 

T.CSVとは
近年、CSV(共通価値の創造)という、ビジネス上の経済的価値のみならず社会的ニーズに対応することで社会的価値も創造するという概念・アプローチが普及してきている。消費者意識が高まる中、企業の戦略的アプローチとしてのCSVと従来型の取組みとの違いや重要となるケイパビリティについて紹介する。

U.保険業のコア領域に社会的価値の創造を組み込む
保険業は、保険カバー・プロテクトによって社会に便益をもたらすことが出来る。本章では、Shared Value Initiativeのレポートでの予防・引受・投資の3分類に基づき、保険業のコア領域に社会的価値創造活動を組み込むことで(バリューチェーンを再構築することで)CSVを実現している事例について紹介する。

V.慈善活動とエンゲージメント
本章では、保険事業とは直接関係のない慈善活動への顧客の参加を促進することで、顧客とのエンゲージメントを深める取組みを紹介する。これらの取組みは、必ずしも「共通価値」を創造しているとは言えないかもしれないが、社会的価値を創造し、それによって顧客エンゲージメントを深め、結果としてビジネス面における経済的価値に繋げようという点で興味深いものである。

W.CSVにおける経験価値や心理学・行動科学の観点
顧客に選ばれるためには経験価値という概念は重要である。また、顧客に負担を感じさせずに、プログラムに則った行動をとってもらうためには、心理学や行動科学といった領域の知見が重要となる。

X.おわりに
保険業は保険引受によって社会を下支えすることができ、CSVを実現しやすい業種でもある。今後、保険会社の持続的な取組みによって、いくつかの社会的課題が解決されていくことを期待したい。

   
 

変わりゆくビジネスと人権
〜ESGの主要課題としての労働者の人権への配慮〜 (PDF1.3MB)

   
 

= 要 約 =
副主任研究員 大沢 泰男

   
 

T.はじめに
国際社会の掲げるSDGs目標の一つである「働き甲斐のある人間らしい雇用(ディーセント・ワーク)の促進」について、いまだに多くの課題が残されている実態が見えてくる。本稿ではこれまでの「ビジネスと人権」の関係について概観するとともに、今、何が企業に求められているのか、その問題について考えてみたい。

U.なぜビジネスにおいて人権問題が取り上げられるのか
多国籍企業による発展途上国での人権侵害や労働搾取は依然として未解決の問題である。それに加えて、ミレニアル世代の台頭や情報化・デジタル化の進展、企業マインドの変化がビジネスと人権問題を取り巻く環境を変えつつある。

V.ビジネスと人権に関する仕組みづくりが進む世界
国際社会においても企業における人権問題に対する義務を強める動きがある。「ラギー報告書」や「ビジネスと人権に関する指導原則」を受けて各国政府におけるルール作りが始まっている。

W.発展途上国では何が起きているのか
過去に生じたアンフェアな競争を発端とした悪循環は、好循環へと転換しつつある。ただ、企業にはステークホルダーから終わりのない問いを投げかけられている。

X.先進国で顕在化しはじめた問題
先進国においても形を変えた労働搾取が進みつつある。また、社会におけるデジタル化の進展は、企業と労働者の在り方について新たな問題を提起している。

Y.ESG投融資における企業の人権問題に対する見方の変化
企業に対する資金の出し手である金融機関や投資家は、ビジネスにおける人権問題にも注視し始めている。企業はESGという観点で、環境問題と同様に実効性のある対応を求められる可能性がある。

Z.おわりに
企業はビジネスにおける人権問題について能動的な取り組みが求められている。また、法律や規制を順守するだけではなく、持続可能な社会を築いていく一員として、積極的な関与を続けていく必要がある。

   
 

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