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2021年3月31日発行 Vol.78       ニュースリリース(未来研レポートVol78発刊)

  内 容 (PDFにて全文閲覧できます。)
 
掲載論文:

1.ESG 投資に取り組むべきか

 

2.Financial Well-being と金融機関の取組

 

3.代替タンパク質の拡大と代替タンパク質をめぐる議論

 

4.オランダにおける健康保険・介護保険制度の改革動向と特徴

  5.コロナ禍で進化する政策判断における民間データ活用
〜急速に進展したナウキャスティングを中心に〜

 
ESG投資に取り組むべきか(PDF1.0MB)
   
 

= 要 約 =
執筆者:フェロー 隅山 正敏

   
 

T.はじめに
ESG投資は投資リターンの獲得とESG問題の解決という二兎を追う。実務者としては「二兎を追う投資が投資として成り立つのか」など様々な疑問を抱えるが、ESG投資の必要性が声高に論じられる中で疑問を言い出せない状況にある。

U.関係者から見たESG投資
ESG投資を定着させたのは「国連責任投資原則」であり、その関係者は国連、機関投資家及び金融機関である。国連は、各国政府の意見の一致を望み難い地球規模の問題を解決するために、企業や投資家に働きかけることを選び、その選択は功を奏した。機関投資家は、株主として投資先企業に働きかけること(株主活動)が長期的利益に繋がるという議論(スチュワードシップ)に後押しされ、株主活動の指針としてESG投資に取り組んでいる。金融機関は、かつては環境汚染企業に融資していることを責められたが、近年は環境貢献企業に資金を供給する責任が議論され、経営戦略としてESG投資に取り組んでいる。関係者は、異なる動機からESG投資に取り組み始めたが、参加のしやすさが裾野を広げて大きな流れを生んだこともあり、ESG問題への貢献に向けたwin-win関係が成立している。

V.ESG投資に取り組む際の課題
ESG投資を投資として見ると様々なネガティブ要因が浮かび上がる。先行的にコストが発生する「コスト問題」、他の投資手法より優れていると実証できない「投資リターン問題」、投資リターンを犠牲にすることを許さない「受託者責任問題」などである。他方で、ESG投資を多数の投資家を糾合する社会的運動として見ると、集まった投資家の数だけ影響力が高まり、ひいては「着実な投資手法」の地位を獲得する可能性も生じる。
投資家が実際にESG投資を開始した後にも、企業評価をどのように行うのか、投じた資金がESG問題の解決に本当に貢献しているのかなどの問題を抱える。巨大投資家は、自らの長期的利益を守るためにこうした課題に先陣を切って取り組んでいくことが正当化される。そうではない投資家は、「リーダー追随方式」など身の丈に合った取組みが受託者責任の観点から必要である。

W.おわりに
冒頭に掲げた「実務者から見た疑問」に対し「疑問を氷解させる正解」はなさそうである。ただ、ESG投資を「社会的運動」と捉えて、その流れに乗り遅れないことが重要であると言うことはできる。ESG投資を開始する際には「身の丈に合った取組み」が受託者責任の観点から必要である。

   
 

Financial Well-beingと金融機関の取組(PDF1.2MB)

   
 

= 要 約 =
執筆者:主任研究員 林 勝己

   
 

T.はじめに
先進国では、住宅価格や教育費などの生活費が上昇する一方、社会経済を支える中間層の所得は伸び悩み、経済的なストレスや不安が高まっている。そうした中、経済的健全性を確保し、将来の安定を図るFinancial Well-beingという概念が注目され、金融リテラシーの向上、家計管理や人生設計等を支援する取組が進められている。

U.Financial Well-beingとは
Financial Well-being(FW)とは、現在と将来にわたる経済的な健全性と人生を楽しむための選択の自由を確保することであり、その要因には世帯年収や人種、教育水準等の「社会・経済環境」、収支管理や貯蓄等の「家計管理」、このほか「金融知識と効果的な利用」、「人生設計」がある。収入が少なくとも、適切な家計管理や金融サービスを適切に利用すること等により経済的健全性を高めることができる。
FWが悪化すると物理的・精神的な健康を損なうリスクを高め、また、生活者個人だけでなく企業の生産性や経済活動など広く社会・経済に悪影響が生じる可能性がある。社会・経済の基盤となる中間層は、所得の伸び悩みと生活費の上昇などの経済的ストレスにさらされており、FW向上をはかっていく必要がある。

V.Financial Well-being向上に関わる取組
国や企業、金融機関では、金融リテラシー向上のための教育や家計管理、人生設計に関する支援が行われており、本章ではFW向上を後押ししている事例をとりあげる。金融機関には、豊富なデータを活用した顧客の適切な家計管理や人生設計を支援する金融サービスを提供することが期待されている。

W.おわりに
金融機関のFW向上に関わる取組は、企業価値を高め、厳しさが増す事業環境の中で顧客から必要な存在として選ばれるために必要なものと考えられる。

   
 

代替タンパク質の拡大と代替タンパク質をめぐる議論(PDF2.1MB)

   
 

= 要 約 =
執筆者:主任研究員 内田 真穂

   
 

T.はじめに
持続可能な食料生産システムに対する関心が世界的に高まる中、「代替タンパク質」と呼ばれる分野が注目を浴びている。植物性代替肉や培養肉など、新たなタンパク質製品の開発を目指すスタートアップ企業が続々と誕生し、大手企業の参入も相次いでいる。

U.代替タンパク質が注目を浴びる背景

代替タンパク質が注目を浴びる背景には、人口増や中間層の拡大に伴う食肉需要の増加による将来のタンパク質不足への懸念と、現行の畜産業が地球環境に与える負荷が高く持続可能性が低いことがある。消費者の健康志向、環境問題や動物の福祉に対する関心の高まりも市場の活況を後押ししている。

V.代替タンパク質のイノベーション
代替タンパク質の中でも有力なのが、植物性代替肉、培養肉、微生物・発酵技術による乳卵、昆虫食である。本章では、市場をリードし、注目される代替タンパク製品やその特長等を紹介する。

W.代替タンパク質をめぐる議論
代替タンパク質が本当に健康的で環境に優しいのかには諸説ある。植物由来、昆虫由来の製品の中には塩分が多く必ずしもヘルシーとは言えないものもある。培養製品は畜産による環境負荷はなくとも培養施設におけるエネルギー効率やCO2の排出など畜産とは違った側面で環境への配慮が求められる。遺伝子組み換え技術を使用している製品に対しては、遺伝子組み換え作物反対論者からの反発もある。

X.代替タンパク質は消費者に受け入れられるのか
人工的に製造される培養肉に対する消費者の受容度には、国により差異があるものの、抵抗感を持つ者は多い。環境面のメリットや倫理を訴えるだけでは特定の層向けの商品に留まる可能性がある。量産化やコストの問題をクリアし、安全性に対する不安を払拭するよう消費者の理解を深めていくことが必要である。植物性代替肉についてはヘルシーさや肉らしさをアピールするだけでなく、積極的に選択されるような商品コンセプトや料理の提案などのマーケティングが普及を促すと考えらえる。

Y.おわりに
新たなタンパク質の開発は持続可能な食糧生産システムの構築のために不可欠である。課題は多いが、食生活を変えるポテンシャルは十分にあるのではないか。

   
 

オランダにおける健康保険・介護保険制度の改革動向と特徴(PDF1.7MB)

   
 

= 要 約 =
執筆者:客員フェロー 小林 篤

   
 

T.はじめに
オランダは、早くから公的介護保険制度を創設し、公的健康保険に管理競争を導入するなど、極めて特徴的なヘルスケアに関するサービス(医療介護)の改革を継続的に行ってきた。オランダの取組は先進諸国の制度改革における参考にされることが多々ある。オランダの健康保険・介護保険制度の改革動向と特徴はどのようなものなのだろうか。

U.2006年ヘルスケアサービス(医療介護)改革の沿革
2006年ヘルスケアサービス(医療介護)改革では健康保険者に管理競争が導入された。もう一方で、伝統的に病院等のヘルスケアサービス供給者には新規参入制限・抑制的価格規制が行われてきた結果、病院受診の待機者が生じるなど問題が生じたため、ヘルスケアサービス提供者についても需要者主導の競争を導入する自由化・規制緩和が実施された。2006年改革のヘルスケアサービス(医療介護)システムでは、第一層公的介護保険、第二層公的健康保険、第三層補完的な私的保険の三層構造になっている。第二層の公的健康保険で、社会保険で私的保険者が公的保険者になっている点はオランダ流の独自・独創的な点である。

V.2015年ヘルスケアサービス(医療介護)改革
財政的に深刻な状況に陥った結果、持続可能性を確保するとの危機感から介護分野と医療分野の両方に関わる介護サービスの包括的改革が実施された。地方自治体が重要な役割を担う分権化の進展およびコストを公的財源から民間・私的財源にシフト、施設のケアをホームケアに二次医療をプライマリーケアに代替するなどの手法を駆使したコスト抑制策が推進された。

W.ヘルスケアサービス(医療介護)改革の進行状況
2006年改革は、ヘルスケアサービスのコスト抑制の観点からは、成功したとは言いがたいと評価されている。2015年改革により介護サービス関係の支出増加は、横ばいになった。

X.健康保険・介護保険制度の改革動向と特徴
健康保険改革の動向では、その独自性と独創性、当事者の行動特性・インセンティブに着目した改革という特徴がある。介護保険制度の改革動向では、財政的な問題に関する危機感が最も大きな起動力になり、体裁などにこだわらない手段で現実的実際的な課題解決を進めているという特徴がある。

   
 

コロナ禍で進化する政策判断における民間データ活用
〜急速に発展したナウキャスティングを中心に〜 (PDF1.3MB)

   
 

= 要 約 =
執筆者:副主任研究員 菊武 省造

   
 

T.はじめに
民間を中心に生成されるビッグデータの普及を受けて、政府や中央銀行は足元の経済情勢を把握する「ナウキャスティング」の研究を進めてきた。本稿では、ナウキャスティングが注目されている背景を示した上で、今般急速な進展を見せているナウキャスティングの取り組みについて解説する。

U.ナウキャスティングとは何か
ナウキャスティングとは、直近の経済情勢を迅速に把握する手法である。「速報性」「データ量の膨大さ」「データ利用に係るコストの安さ」といった特徴を有する民間データがナウキャスティングでは主に活用される。

V.ナウキャスティングの研究・取り組み事例
2010年代半ば頃から、日米欧の政府・中央銀行、あるいは国際機関において、インターネット検索データ、POS(販売時点情報管理)データ、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)投稿等の民間データを用いて経済情勢を速やかに把握しようとするナウキャスティング手法の研究開発が進められている。ただし、民間企業からデータを提供してもらうためのインセンティブ設計やデータの信頼性確保など課題も多いため、実用化に至ったナウキャスティングの事例は少ない。

W.コロナ禍での急速な実用化進展
新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、各国の政策当局が迅速な政策対応を迫られるなか、ナウキャスティング手法の実践的な活用が急速に進められ、またその多くで有用性も実証されつつある。

X.おわりに
今般のナウキャスティングの積極活用は、民間企業によるデータの無償提供といった協力によって成り立っている。公的機関が民間データを今後も継続して利用するためには、ビッグデータを保有する企業が、プライバシー保護とビジネスとしての採算確保を両立できることが重要であり、そうした環境の醸成に向けた国内外での議論を期待したい。

   
   

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